金属の酸化物を定着させる

銀色のれんに使用されている顔料は、かつては銀をすりつぶして顆粒状にしたものに動物の皮などから生成して作られた糊を混合して使用していましたが、定着しにくく剥がれやすかったのも確かです。

一方、現代では科学的な技術が進み、銀色であってもしっかりと定着させることが可能となりました。原材料にはマイカというケイ素鉱物に酸化チタンを混合し、アクリル系顔料の場合はアクリルメディウムという糊の役割をするものを混ぜれば完成です。

顔料を載せる方法としてはこのメディウムの品質が鍵を握っており、これにより繊維への定着や耐久力に差が出ます。塗布すればマイカとチタンが光を受けて反射し、あの独特の輝きとツヤが生まれます。

この顔料であれば布やプラスチックなど様々な素材にしっかりと定着し、滅多なことでは色落ちすることもありません。この顔料は月見うさぎがデザインされた銀色のれんにも用いられており、道行く人々にインパクトを与えてそのお店に寄ってサービスを利用したいと言う気持ちを促す効果が期待できます。

銀色のれんに描かれた月見うさぎのかわいらしさと神秘性に魅せられ、同時に視野に入った店名やサービスを強く印象付けます。

月見うさぎのれん

顧客の心に訴えかける

月見うさぎが描かれた銀色のれんは知的で上品な印象を与えるだけではなく、心理的にも様々な作用があることが分かっています。

月のうさぎは日本では餅をついているように見えるとされ、将来にわたって食べ物に困らずに暮らせる縁起の良いものだとされています。一方、海外ではうさぎが薬草を作っていると解釈されている国もあり、無病息災を願うものだとされていました。

さらに銀色には色彩心理があり、洗練された美しさと清潔感があると思わせたり、近未来を感じさせるほか、冷たい印象から清涼感を覚えたり、心を落ち着かせる作用もあると言われています。

銀色の心理効果

これらの要素は飲食店などに向いていることが多く、その銀色のれんを見ればリラックスしてくつろぎ美味しい飲食を楽しみたいという心理にさせ、入店やメニューの注文を促す効果が期待できます。

さらに前述のうさぎの縁起の良さは店舗が商売繁盛するだけではなく、利用客に対しても健康や安寧を願うものであり、質の高いサービスの提供とそこに集う良質な顧客との信頼関係の構築を皮切りに、やがて常連客となって定着してもらうという願いも込められています。

銀色のれんにはそれを設置した店舗の業績を上げるためだけではなく、周囲の人々の幸せにも寄与する伝統的なものであることが分かります。

 


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